蟷螂の斧

第13回 床屋政談に興ずる左翼学者たち

二月十八日、第二次高市早苗内閣が誕生したが、高市が首相になつてからといふもの、オールドメディアは何かと高市を貶めようといふ執念に取り憑かれてゐるかのやうで、高市自民党が大勝した後も、自分たちの希望的観測が大きく外れたことへの反省もなく、一層高市政権の揚げ足取りに懸命である。そんな折り、さぞや切歯扼腕してゐるだらうと見当を付け、ネット購読してゐる「朝日新聞」を覗いてみたら、思つた通りだつた。まともな文章が書けぬことで有名な編集委員の高橋純子が構成を担当してゐる「この国のゆくえ」といふ連載物があり、二月十三日には杉田敦・加藤陽子・長谷部恭男の三人の鼎談が掲載されてゐて、早速読んでみた。

杉田は法政大学教授で政治学者。私は全く知らぬ人物であつた。東大教授の加藤は日本学術会議への入会を当時の菅義偉首相により拒否されたことで知られ、早稲田大学教授にして東大名誉教授の長谷部は「日本国憲法はアメリカの贈り物であり、日本の憲法原理はアメリカのそれと等しい」と愚昧なことを著書に書いた、常に自説の根拠を示さぬことで有名な憲法学者である。

さすがは「朝日」に重用される左翼の学者たちだけあり、ここではほとんど発狂してゐるが如くである。現実を見る目がないので空論に走り、しかも高市の政治観など知らうともせずに批判してゐる。庶民の床屋政談と何も変はらない。

それを見て行く前に、先づは高橋のリードを読んでおく。相変はらずの悪文はむしろ微笑ましいものがある。高橋は冒頭かう書いてゐる。「異例ずくめの真冬の選挙は、大した政策論争も行われぬままいつしか首相の人気投票に変質した感があり、結果、自民党の歴史的圧勝に終わった。してやった/してやられた感がいまだに抜けない。とはいえ高市政権の前途には、内政、外政とも課題が山積する」と。前の方の「感」は「観」ではないかとも思ふが、それはともかく、要するにこれは、テレビショッピング流の「個人の感想」であつて、その証拠に、私にはそんな「感」は皆無だ。さらに、接続詞的に使用してゐる「とはいえ」は全く非論理的で、「してやった」以下とどういふ関係にあるのか。「外政とも」は「ともに」だ。高橋は改めて作文の勉強をやり直すべきであらう。

三名の鼎談者たちは政治、歴史、憲法の学者たちだが、これから見るやうに「個人の感想」だけをダラダラと言ひ募つてゐる(尤も、ショーペンハウアーによれば「学者とは様々な本を読んだに過ぎない者」といふことになるが)。

以下、各自の主な発言を箇条書きで紹介する。◎印の後ろはそれに対する私の批判だが、まともに批判する気にならないので揶揄を宗としたい。

▼杉田敦

・高市首相の「日本列島を強く豊かに」の「中身は不明」。◎だつたら、自民党のHPなり高市の著書を読んだらどうか。

・「責任ある積極財政」も、何となく消極より積極の方がいいねと」。◎これも感想に過ぎず、それに還暦も過ぎてこの言ひ方は気色ワル!

・選挙で有権者の意見を聞くので民主的だというわけですが、そういうやり方は、政治家が有権者を、自分たちの権力を支える道具として動員しているだけです。◎本気で言つてゐるのかいな。選挙で国民に民意を問ふことに何か問題でも?あんたら左翼やオールドメディアがギャーギャー言ふから、高市で良いのかを国民に問うたのだよ。呆れてものが言へませんな。

・自分の「お気持ち」で投票するのではなく、自分が落したい候補以外の中で、一番勝ちそうな人に投票する。それが政党政治の作法です。◎おい、おい、大丈夫ですか。えらい「珍説」でんな。選挙は「一番期待できそうだと思ふ人に投票する」のが当たり前だし、それで構はない。「お気持ち」のどこが悪いのか。「我々が真理を知るのは、ただ理性によるばかりでなく、心にもよる」とパスカルが書いてゐるではないか。

▼加藤陽子

・高市さんが進退をかけているんだから、絶対に勝たせなければならないという「推し活」のような行動様式が、国政という場で不幸にも花開いてしまったという見方もできるかもしれません。◎困りますなあ、加藤先生。六十歳代後半になつて「推し活」なんていふ若者言葉なんぞ使ふものではありません。私は意味が分からないからネットで調べました。「好きな人物を様々な方法で応援すること」らしいですね。それが何か問題でも?

・政策実現のために議席を増やしたいというのならまだしも、自分が疲弊するから土俵を変えたいという実に後ろ向きの動機で、解散権という強大な刀を、異例ずくめの悪辣なやり方で抜いた。◎「後ろ向きの動機」つて、証拠があつて言つてゐるんでせうね!証拠なしにものを言ふのは「悪辣なやり方」です。そんなことをしてゐるから菅元総理に目を付けられたんだよ。

・(アメリカの最新の戦略を踏まえて)日本も中国に対する(戦略文書の)書きぶりをトーンダウンさせるのが筋です。(略)かつて吉田茂や池田勇人は「軽武装・経済重視」で高度経済成長を成し遂げた。そのやり方を思い出して欲しいものです。◎吉田や池田の政策がベストだと考へてゐるのか。それらに対する反省の上に立つて今の民意が形成されてゐるのだ。それに、そもそも当時の中共はまだ発展途上の国で、国力も弱く、核ミサイルを五百発も保有してゐなかつたぞ!

・安全保障政策については専門家による幅広い見地からの熟議が必要です。◎何を今さら。外務省をはじめ、民間でも「日本戦略研究フォーラム」、「国家基本問題研究会」、「民間憲法臨調法曹関係者懇談会」「歴史問題研究会」など多くのグループが政治家とともに様々な研究や議論を行つてゐますぜ。要は自分が招かれない活動は認めないといふだけのことでしよ。

・(高市政権の反中国政策は)アジア太平洋全域の国際秩序に重大な改変を加える行為だと、他国からは見えているとの自覚が必要です。今や、これまで対中外交に尽力してきた政財界や国民の結集が求められる局面に来ています。◎媚中派学者の正体見たりである。「他国」がどう見てゐるか、本当に知らないのかね。それでは教へて進ぜよう。己の無智を恥ぢるが良い。

●ヘイハースト駐日オーストラリア大使

「日本が地域と世界の平和と安定に貢献してきたことを支持しており、必要なのはルールと国際法を守ることだ」(十一月八日)

●シンガポール/ウォン首相

「明らかに日本側は対中関係を安定させ、エスカレートを避けたいと思っているようだ。中国も同じ態度になってほしい」、「シンガポールを含む東南アジアの国々は、日本がこの地域で安全保障を含めより大きな存在感を発揮することを支持している。それが地域の安定に資すると考えるからだ」(十一月九日)

●頼清徳台湾総統

「中国はトラブルメーカーになってはならない」、「中国が日本に対して複合的な攻撃をしており、インド太平洋の平和と安定に深刻な衝撃を与えている」「地域の平和と安定を乱すトラブルメーカーになってはならない」と自制を求めた。「ルールに基づく国際秩序に回帰するべきで、それこそが地域の平和と安定、繁栄に資する」(十一月十七日)

●ピゴット米国務省副報道官

「日米同盟や日本が施政権下に置く尖閣諸島を含む日本の防衛に対する我々の責務は揺るぎない」、「日米同盟はインド太平洋地域の平和と安全の礎であり続ける」、「台湾海峡、東シナ海、南シナ海での武力や威圧を含むいかなる一方的な現状変更の試みにも断固反対する」(十一月二十日)

高市発言に対するアジア主要紙の反応

●シンガポール/「ストレーツ・タイムズ」

「日本に軍国主義的傾向が再び現れるという中国の言説に東南アジアが納得する可能性は低い」

●インド/「タイムズ・オブ・インディア」

「中国の強硬姿勢の強まりは、インドと日本の共通の懸念事項。両国は安全保障と軍事分野での協力を強化する必要がある」との専門家のコメントを紹介

●オーストラリア/「オーストラリアン」

「日本は我々の確固たる支持に値する」

(以上は令和七年十二月二十一日付「民間憲法臨調」メール情報より)

▼長谷部恭男

・高市首相はアイドル(偶像)として選挙を戦った。◎本当かね?アイドルはもっと若くて派手だろ。

・首相としての実績がゼロに等しい。◎昨秋以降の働きぶりが目に入らないのか?

・NHKの首相討論に欠席し、具体的に何がやりたいのかさっぱり分からない。◎討論欠席の理由は既に明らかにされてゐる。病人に対する惻隠の情のカケラもない。分からなければ、自民党のパンフレットや高市の著書を読んだらどうか。杉田にしてもあんたにしても、もう少し高市の主張する政策を勉強したらどうか。さうすれば、同じ批判でももつと具体的になり、生産的なものになつたはずだよ。

・議会政治の公正な運営で力のあった彼ら(安住淳、枝野幸男、武正公一)を失った損失は大きく、憲政史上ゆゆしいことです。◎一読、卒倒しさうになりました。これだけ偏向してゐる人間が東大や早稲田で教授なのは「ゆゆしいこと」ですな。

・今後、高市さんはスパイ防止法の制定や非核三原則の見直し、憲法改正も進めようとするでしょう。大変危惧しています。◎それをしてもらいたいから多くの国民の支持を得たことが分からないのは、能力の問題ではなく、認めたくないからでせうな。

・高市首相は憲法憲法改正に意欲を示しているようですが、間違っても熟議なき発議がされないように祈ります。◎憲法改正の必要性は民意であることを無視してゐる。何が「熟議なき発議」か!あんたの好きな立憲民主党が憲法審査委員会での「熟議」を行はせなかつたんだよ!

・(解散権の乱用によつて)日本は国政選挙のサイクルが異様に早く、有権者が個別の政策について考える暇がありません。それでも今までは党首の人気投票になっていなかった。自民党の人事システムが年功序列的で、人気や能力があるからといって、一足飛びにリーダーになることはできなかったからです。◎いつから自民党的人事の「年功序列」を認めるやうになつたんだい。それに、高市が政界に入つてから既に三十四年。様々な大臣、委員長、会長などを歴任して来てゐるので「一足飛び」といふのは全く当たらない。それに「党首の人気投票」はこれまでにもあつたではないか。私と同い年なのに、健忘症が進んでゐますな。

もはや十分であらう。彼らは高市憎しだけで鼎談を行ひ、高市政権の失敗、失墜を夢見て、憂さを晴らしてゐるだけである。読者に資するところは何もない。これが学者のやることか!

長谷部の「鼬の最後屁」のやうな最後の言葉がこの鼎談の性質を明確に表してゐる。曰く、「政治を良く出来るのは、ちゃんと自分の頭でものを考えることができる有権者だけです」。つまり、今度の衆院選の結果は「自分でものを考えることができない」有権者たちの所為であると言ひたいのである。何と言ふ国民、選挙民への愚弄の言葉であるか。かういふ輩が長らく東大法学部で教壇に立ち、早稲田大学に転出した以後も学会で権勢を振るつてゐるとは、考へただけで暗澹とした気分になる。

東大卒の自分たちだけが政治や民主主義を語る資格があるなどと、努々思ふ勿れ。最後にさる賢哲の言葉を引く。かういふ言葉を少しは拳拳服膺するが良い。

「要するに民主主義の信条とは、もっとも重要な物事は是非とも平凡人自身に任せろというにつきる。たとえば結婚、子供の養育、そして国家の法律といったことがらだ。これが民主主義である。そして私はその信条をいつでも信じ続けてきたのである。」(G・K・チェスタトン『正統とは何か』著作集①、福田恆存・安西徹雄訳、春秋社)〈了〉(敬称略)(令和八年二月二十三日)

吉田好克

吉田好克について 吉田好克は、神道・宗教・日本思想・歴史・政治・社会について、長年にわたり研究・教育・執筆を続ける論者です。 その関心の中心にあるのは、個々の時事問題そのものではありません。 日本とは何か。 日本人はいかに生きるべきか。 歴史や伝統を、現代にどう受け継いでいくのか。 そうした根源的な問いを、宗教、思想、歴史、社会のさまざまな角度から考え続けています。 論考では、福田恆存、江藤淳をはじめとする先人の思想や、国内外の文献を幅広く参照しながら、現代社会で当然のように語られている価値観や言説を改めて問い直します。 その姿勢は、特定のイデオロギーから現実を説明するのではなく、歴史、伝統、人間の営みという現実から、思想や制度を見つめ直すことにあります。 連続論考「蟷螂の斧」では、外国人労働者問題、戦後日本とキリスト教、原爆忌と平和思想、安全保障、靖国神社、保守思想、政治家論など、現代日本が直面する問題を幅広く取り上げています。 「蟷螂の斧」という名の通り、たとえ小さな力であっても、疑問を抱いた問題には自らの言葉で向き合う。 その文章には一貫して、日本の歴史と文化を次代へどうつなぐのかという問題意識があります。 本サイト「吉田好克.jp」では、「蟷螂の斧」をはじめ、これまでに執筆された論文、評論、寄稿、講義資料などを整理し、吉田好克の知的成果をデジタルアーカイブとして公開していきます。

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