梓弓

第38回 選挙結果と日本の未来

第五十回衆院選挙の結果は周知のやうに、与党の自民・公明が歴史的惨敗を喫し、その分、野党の特に立民党と国民民主党が議席数を大幅に伸ばした。一方で、日本保守党が新党ながら国政政党の仲間入りをし、参政党も三名が当選した。

しかし、投票率は全国で五十三・八五%で、戦後三番目の低さだといふ(小欄の住む県では五十%に満たなかつた)。従つて、今回の結果はとても「民意」の積極的な表れだとは言へまい。特に立民党は自惚れるべきではない。岸田内閣の二番煎じのやうな石破内閣と自民党を忌避して投票を棄権した有権者は多かつただらうし、折角の権利を無にするのは悪手と考へ、不承不承立民党に投票した選挙民も多かつたはずだ。他の新進の小政党に比べれば、結党以来七年は経つてゐるから、悪名が無名に勝つたといふことではなかつたか。

忘れた読者もゐるかも知れないが、七年前、立民党は前身の民進党時代、小池百合子人気を当て込んで全員が希望の党に入ることを両議院総会で決定したものの、小池の「排除」発言に敢へ無く腰砕けとなり、枝野幸男らが急拵へした政党である。立党の時点から無策の政党であり、今回の選挙公約も実現は不可能なことと不適切なことの羅列であつた。

こんな立民党の躍進の裏にはマスメディアの密かな企みがあつたと思はれる。争点は「政治とカネ」であると矮小化して喧伝し、左派系政党を裨益した。それに乗じた候補者の多くは「腐敗した自民党」を攻撃すれば良かつた。そして、それは分かり易い問題なので、国民の間に浸透して行つたことは否定できない。

しかし、日本が直面してゐる危急存亡の問題は別にある。高市早苗が事あるごとに言ふやうに、護るべきは「領土、領海、領空、資源、主権、名誉」である。これらが大きく毀損されてゐる現状を国民に知らせようとした候補者がどれだけゐただらうか。

然るに、石破政権の公約の第一は、「ルールを守る」である。中学校の学級会並のスローガンだ。漸く三番目に「国を守り、国民を守る」が出て来るが、さういふことは、せめて、中共が我が国のEEZ内に配備した海洋探索ブイを撤去してから言つて欲しいものだ。

ともあれ、国を護れなければ、賃上げも福祉も教育も、如何なる政策も砂上の楼閣だ。国防は票にならぬとて警鐘を鳴らさない政治家と、侵略されることは無いといふ「確証バイアス」に引つ張られた国民に果たして未来はあるだらうか。

参政党と日本保守党だけは国防意識が高いやうだ。今後の飛躍のためにも内紛もどきは早く克服して欲しいものである。(令和六年十一月号)

吉田好克

吉田好克について 吉田好克は、神道・宗教・日本思想・歴史・政治・社会について、長年にわたり研究・教育・執筆を続ける論者です。 その関心の中心にあるのは、個々の時事問題そのものではありません。 日本とは何か。 日本人はいかに生きるべきか。 歴史や伝統を、現代にどう受け継いでいくのか。 そうした根源的な問いを、宗教、思想、歴史、社会のさまざまな角度から考え続けています。 論考では、福田恆存、江藤淳をはじめとする先人の思想や、国内外の文献を幅広く参照しながら、現代社会で当然のように語られている価値観や言説を改めて問い直します。 その姿勢は、特定のイデオロギーから現実を説明するのではなく、歴史、伝統、人間の営みという現実から、思想や制度を見つめ直すことにあります。 連続論考「蟷螂の斧」では、外国人労働者問題、戦後日本とキリスト教、原爆忌と平和思想、安全保障、靖国神社、保守思想、政治家論など、現代日本が直面する問題を幅広く取り上げています。 「蟷螂の斧」という名の通り、たとえ小さな力であっても、疑問を抱いた問題には自らの言葉で向き合う。 その文章には一貫して、日本の歴史と文化を次代へどうつなぐのかという問題意識があります。 本サイト「吉田好克.jp」では、「蟷螂の斧」をはじめ、これまでに執筆された論文、評論、寄稿、講義資料などを整理し、吉田好克の知的成果をデジタルアーカイブとして公開していきます。

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