本年六月、岸田内閣は出入国管理法の改正を閣議決定した。
これまで、不法滞在者が上限無しの難民申請を繰り返してゐる間は送還されなかつたが、それを二回までとし、三回目の申請については「相当の理由」が無ければ認めず、送還できることになつた。この点は改善と言へるが、特例事項は不要だつたのではなからうか。申請者の中に「難民はほとんどいない」(一昨年四月、「難民を助ける会」柳瀬房子会長の衆院法務委員会での答弁)からである。
しかし、一方で、「特定技能二号」の対象業務区分を拡大した。ビルクリーニングや自動車整備などは特定技能の具体性が思ひ浮かぶが、「宿泊」とは何のことか。技能と言ふからには、たぶん観光ホテルなどに配置する通訳のことかと想像するが、それにしても「宿泊」とは。この語の不適切について誰も指摘しなかつたのだらうか。さらには、農業、漁業、外食業とあるが、安価な労働力の獲得として批判の多かつたこれまでの「技能実習制度」とどこが違ふのか。「ザル法」とでも言ふしかない。
そして、二号には在留期限が無く、家族の帯同が可能なのだから、これは移民政策に大きく舵を切つたことになる。その裏には「外国人と共生する社会」は必須であるとする安倍、菅、岸田の歴代首相に共通の考へがあるのだが、移民政策が成功した国は皆無であるといふ冷厳な事実を我々は直視するべきだ。
往時、西ドイツ、フランス、イギリスの失敗があり(ドイツは最近もシリア難民を受け入れて失敗した)、最近ではカナダ、オーストラリア、ニュージーランド、スウェーデンなどが移民、特に中国人を受け入れた後の対応に非常に苦労してゐる。周知の通り、中国人は移民先の文化を尊重することが極めて少ないからである。既に我が国でも東京近郊では「チャイナ団地」が形成されて、地元住民との軋轢が指摘されてゐる。最近では大分県日出(ひじ)町でムスリムの土葬用の土地の売買があり問題化してゐるし、川口市ではクルド人の横暴に手を焼いてゐるといふ現実がある。
右のやうな状況が続けば、諸外国と同様に、治安の悪化と文化破壊を招くであらうことは十分予測可能だ。その時、政府はどうするつもりであらうか。
福井義高によれば、抑々「移民推進は自国民の経済成長にはほとんど影響しない、むしろ全体としてはマイナスの可能性が高い」(『月刊正論』七月号)のだから、政府は経済・産業界の安易な要求に応へるのではなく、「生産性を向上させるための財政支援や大規模なインフラ投資」(中野剛志、同前)を行ふべきなのである。(令和五年九月号)














