ロシアのウクライナ侵略は決して対岸の火事ではあり得ない。ロシア上空を飛行機が飛べずに物価が上昇するといふやうな経済問題だけではない。西側先進国としての責任があるし、何より「平和ボケ」が共通するといふ両国である(グレンコ・アンドリー『ウクライナ人だから気づいた日本の危機』育鵬社)。
我が国はロシア、中国、北朝鮮といつたいづれも覇権主義を奉ずる専制国家が隣人であるのだから、ウクライナは明日の日本だといふ深刻な危機感を持たずに外交や内政を考へてはなるまい。しかるに、さういふことを一切理解しようとしない、或いはできない橋下徹のやうな性悪男や国会議員が少なからず存在するのが現下の我が国だ。「核共有」の議論さへ否定した岸田首相や宮澤博行国防部会長が良い例で、自民党がこの為体なのだから他は推して知るべしである。
参院予算委員会の席上、立民党の田島麻衣子が「戦争が起こつた時に一番被害を受けるのは女性」だと、珍妙な発言をした。何を言ひたいのかと思つたら、ウクライナに送る人道支援金一億円に「ジェンダーの視点」を入れよと言ふのだから呆れるほかは無い。女=弱者を売り物にするジェンダー政治家の程度は恐ろしいほど低い。同党の小川淳也は「防御(専守防衛)は最大の攻撃」と言つたらしいが、核の抑止力を認めないのだから話にならない。
さらに酷かつたのは共産党である。政策委員長の田村智子は「核抑止の主張は破綻した」と語つた。九条の論理こそ破綻してゐるのがまだ分からないらしい。頭が悪いのか。いや、防弾チョッキの支援に一度は賛成したものの、翌日には撤回したところを見ると、党の見解に逆らへないといつたところであらう。なるほど、「左翼は組織を大事にし、右翼は人間を大事にする」といふ政治人類学者鈴木滿男の弁別法は今なほ有効だ(『「帝国の知」の喪失』展転社)。
志位和夫委員長に至つては、これまでずつと「自衛隊解体」を主張して来たにも拘はらず、有事の際には「自衛隊を含むあらゆる手段を行使」すると言つた。ご都合主義の極みだ。九条を「空文ヲ弄スルモノ」と否定した先輩野坂参三が生きてゐれば冷笑したに違ひない。
他方、「もし戦争が起こったら国のために戦ふか」といふアンケート(本川裕「社会実像データ」最新版)によれば、我が国で「はい」と答へたのが十三・二%で、今回もまた調査対象七十九ヵ国中最低の数字だ。ウクライナは五十六・九%だつたが、「分からない」と答へてゐた二十五・五%は今や実際の艱難に磨かれて玉になつたのではないかと思ふが、今のままの日本では「艱難汝を玉にせず」といふことになるのかも知れない。(令和四年五月号)














