昨年末に明らかになつた清和会の政治資金収支報告書への不記載問題に関して、岸田首相は派閥を解消するといふ不適切な方策を採つた。政治資金パーティーも所謂「キックバック」も派閥それ自体も全く違法ではなく、問題は飽くまでも政治資金規正法違反といふ一点であるにも拘はらず、政界を混乱させるだけの「悪手」を打つたのである。(マスコミもまた、宏池会のパーティーに中国人が大勢来てゐるといふ事実を知りながら、「報道しない自由」を謳歌してゐる。反安倍の政策を行ふ限り、岸田を大事にしようといふことか。)
一月三十日に岸田が行つた「施政方針演説」の全文を読んでみたが、小心者の首相らしく、左見右見(とみこうみ)した、良く言つて総花的なものに過ぎない。
先づ第一に驚いたのは、あれほど強調してゐた「異次元の少子化対策」は影を潜め、「少子化」といふ語さへ出て来ない。「児童手当の拡充」や「子育て世帯を応援」と書かれてゐるだけだ。それに、「女性の有業率」が過去最高と自慢気に言ふが、これが高くなるにつれて少子化が進むといふ現実の隘路をどうするかについては何も語らない。
次に、経済の再生が「岸田政権の最大の使命」であると大見得を切りながら、拉致問題を「政権の最重要課題」とする二枚舌が何とも痛々しい。後者については相変はらず「ひとときもゆるがせにできない人道問題」と大仰な言葉で語り、それが却つて空々しく響く。
空々しいと言へば、「世界の安定と繁栄に向け、国際社会をリードします」といふ件(くだり)だ。中国や北朝鮮の横暴な振る舞ひに対して「遺憾砲」しか打てず、テロ組織と戦ふイスラエルに堂々と味方できない政府に何が出来ようか。国民をバカにするにも程がある。
一方で、「核兵器のない世界」といふ空念仏を唱へることは忘れない。「現実的で実践的な取り組みを継続・強化」すると言ふが、核保有国は陰で嗤つてゐるに違ひない。「現実的」と言ふなら、今、議論するべきは戦争を抑止するための核の保有以外に無いはずである。
狡猾な仕掛けも健在だ。悪評高い移民政策については一切触れないし、憲法改正も憲法審査会に丸投げで、何としてもやり遂げるといふ気概が全く感じられない。改正が出来なかつたとなれば、審査会に責任を押し付けるつもりではなからうか。
さらには、二月五日、人権に関するシンポジウムのビデオ演説で、日本で「差別」が横行してゐるかのやうな罪深い流言飛語を発した。ここまで国民を貶めた首相はゐなかつたのではないか。
かつての民主党政権時代は「悪夢の三年」と言はれたが、岸田政権もまた、将来同じ罵詈を浴びることは確実だ。(令和六年三月号)














