梓弓

第18回 マスメディアの頽廃

我が国の最近のマスメディアの流す情報を見てゐると、問題の核心に迫ることを避け、恥も外聞も無く自らのイデオロギッシュな目的を遂げるために情報操作をしてゐるとしか思へないものが多い。マスメディアの非常識にはもはや驚かないが、特に安倍元総理亡き後、その頽廃の度が急速に進んでゐるやうに思ふ。七月八日以後、何かが変はつたのではなからうか。

前回も書いたが、安倍氏の致命傷の説明が、ドクターヘリに乗り込んだ医師や救命医らと警察の発表に重大な食ひ違ひがあるのに、これを深追ひした記事やTVニュースを見たことが無い。他にも、弾の行方が不明であつたにも拘はらず、その捜査はすぐには行はれなかつた。これらについてYou Tubeで精力的に論じてゐるのは参議員の青山繁晴とジャーナリストの山口敬之、それに札幌医科大名誉教授の高田純で、青山と山口の二人は警察関係者や高官から「この件にあまり首を突込むとタメにならない」との「警告」(脅迫か?)を受けたと言ふ。これら一連の不思議を解明すれば新聞協会賞受賞確実のスクープなのに、社会部の記者たちは何をやつてゐるのだらうか。

また、テレビも同様で、例へば、日テレのニュースは、安倍氏に献花しようと並んだ大行列を上空から俯瞰した映像に、「国葬反対!」といふシュプレヒコールをかぶせた。勿論、事情に疎い視聴者を誑かすためである。

この種の情報操作が最も酷いのが、連日放送されてゐる旧統一教会問題である。代議士が「霊感商法」の片棒を担いだといふのならまだしも、応援したりされたりの「関係」があつたとしても何の問題もありはしない。立民党の打越さく良(弁護士でもある)は山際大志郎経済再生担当相(当時)に統一教会の信仰の有りや無しやを国会の場で問うた。明確に憲法違反であり、それを記事にしたのは「讀賣」と「産経」のみであつた。

十月十六日には、重信房子が反戦集会で十分ほどの挨拶をし、その中で「本当の民主主義はどこにあるのか。政治を変へなければいけない」云々と話した。二十二年間もほぼ只飯を食らひ、その間、医療センターで四回も癌の手術を受けたさうだ。むしろ生き永らへさせて貰つた国家と国民に礼を言ふべきではないのか。盗人猛々しいとはこのことだ。この時、会場で拍手喝采した聴衆は高齢者が圧倒的に多かつた。「年寄りのバカほどバカなものはない」(山本夏彦)といふ言葉を思ひ出したけれど、問題はメディアである。右派の集会なら一万人規模であつても「報道しない自由」を行使してゐるうちに、マスメディアは本当に「オワコン」となるであらう。(令和四年十一月号)

吉田好克

吉田好克について 吉田好克は、神道・宗教・日本思想・歴史・政治・社会について、長年にわたり研究・教育・執筆を続ける論者です。 その関心の中心にあるのは、個々の時事問題そのものではありません。 日本とは何か。 日本人はいかに生きるべきか。 歴史や伝統を、現代にどう受け継いでいくのか。 そうした根源的な問いを、宗教、思想、歴史、社会のさまざまな角度から考え続けています。 論考では、福田恆存、江藤淳をはじめとする先人の思想や、国内外の文献を幅広く参照しながら、現代社会で当然のように語られている価値観や言説を改めて問い直します。 その姿勢は、特定のイデオロギーから現実を説明するのではなく、歴史、伝統、人間の営みという現実から、思想や制度を見つめ直すことにあります。 連続論考「蟷螂の斧」では、外国人労働者問題、戦後日本とキリスト教、原爆忌と平和思想、安全保障、靖国神社、保守思想、政治家論など、現代日本が直面する問題を幅広く取り上げています。 「蟷螂の斧」という名の通り、たとえ小さな力であっても、疑問を抱いた問題には自らの言葉で向き合う。 その文章には一貫して、日本の歴史と文化を次代へどうつなぐのかという問題意識があります。 本サイト「吉田好克.jp」では、「蟷螂の斧」をはじめ、これまでに執筆された論文、評論、寄稿、講義資料などを整理し、吉田好克の知的成果をデジタルアーカイブとして公開していきます。

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