政府の対策分科会会長尾身茂が理事長を務める「地域医療機能推進機構」がコロナ対策費として三百億円以上を受け取りながら、総病床数の五・七%しか患者を受け入れてゐない事実が発覚した。一方、日本学術会議の連携会員である楠岡英雄が理事長を務める「国立病院機構」はもつと酷く、四・八%だつた(八月時点)。それでゐて、尾身は医療崩壊だの病床逼迫だのと言つて民間の病院に協力要請をした。今も会長でゐるのが不思議だ。
武漢コロナ禍は皮肉にも我が国の医師たちの様々な病理を炙り出した。
政府がワクチン接種を決めたものの、協力医師の不足を来し、自衛官や歯科医師、果ては看護師、臨床検査技師、救命士にまで協力要請する羽目になつた。政府や地方自治体は五月に入つて手当を増額して漸く接種態勢を整へることができた。東京都の開業医の場合、平日に週三日、通常の診療後に十回、日曜に五十回接種すれば一週間で三十九万四千円の収入となる(『週刊文春』六月十六日号)。対して、自衛隊医官は日当三千円だ。これに義憤や痛痒を感じる医師はゐないのだらうか。
医師法第十九条には「医師は、診察治療の求があつた場合には、正当な事由がなければ、これを拒んではならない」とあるが、医師が病人を診ずに保健所に行けと言つて憚らない。コロナは感染症法の第五類に下げるべきだが、医師会は何も言はない。厚労大臣もまたコロナを診たくない医師会に何も言へない。そこには当然「算術」があるに違ひない。
筆者の住んでゐる地域の開業医の多くは、見たところ医師一名で平均して医療事務員二三名、看護師五六名を雇用してゐる。たいてい木曜と土曜の午後は休診で日曜と併せて週休二日である。これで豪邸に住み夫婦揃つて外車に乗れるのだ。医師の高収入を妬んでこれを言ふのでは決してない。
数々の医学データを無視した「癌の早期発見・早期治療」の批判や「セカンドオピニオン」を流布させたことで知られる近藤誠(令和四年没)は、母校慶應大学の指導学生から「どの診療科に行ったら儲かるか」といふ質問があり、大きな失望を味はつたと書いてゐる(『医者の大罪』SB新書)。勿論、例外はあらうが、既に学生の時から「医は算術」なのだ。
国立大学はいざ知らず、私立大学医学部は授業料が突出して高額である。慶応でさへ六年間の総費用は二千二百万円、一番高い大学は四千八百万円である。これだけの「投資」をすれば、後に取り返さうと考へる輩がゐても不思議ではない。
かうした仁術より算術が好きな医学界を立て直すには、国民が(イ)生活習慣病や癌を忘れること、(ロ)健康診断を受けない、(ハ)医者になるべく近寄らない、といふ三大原則(近藤、同書)を守ることの他には、「厚労族」以外の大臣人事を行ふしかないのではなからうか。(令和三年十二月号)














