梓弓

第35回 魑魅魍魎と妖魔

都民に非ざる小欄も都知事を決める選挙となれば無関心ではゐられず、各種の報道を追つた。

先づ驚いたのは候補者が五十六名もゐたことだ。中には明らかに売名もしくは何らかの利益追求としか思へぬ輩もゐれば、例の発明ドクターもゐる。さらには、江東区補欠選挙で悪名を馳せた政治ゴロも出てゐる。魑魅魍魎の宴の如くだ。選挙民をバカにしてゐるが、しかし、選挙民のはうもバカにされても仕方が無いやうに思はれる、と言へば言ひ過ぎだらうか。

SNS全盛時代となり、自我の無意味な肥大化、無責任、無思慮が世間で横行し、それと歩調を合はせた、政治など眼中に無い、軽佻浮薄な都民、国民の程度を魑魅魍魎の選挙は反映してゐないだらうか。

マスメディアも逸早く小池と蓮舫との「保革」一騎打ちだとフェイク報道を流し、二人のそれぞれ学歴と国籍の重大疑惑を追究せず、二人が刑事告発されてゐる事実も多くの都民は知らずにゐると思はれる。

七月七日の選挙結果を六月末時点で想像するに、自公と都民ファが支援を決めた小池百合子が三期目の当選を果たすのではないか。しかし、もしさうなれば、「公金チューチュー」を許した不作為も、築地の移転時の失態も、殆どの公約が不履行であることも、太陽光パネル設置義務や都庁のプロジェクションマッピングなどの愚策も都民は不問に付すといふことになるが、それは小池支援を決めた政党から一般都民まで、大きな汚点ではないか。東京都とエジプト政府との不自然な交流も非常に怪しい。

私見であるが、小池は妄想性か演技性かは不明ながら、所謂「虚言癖」があることは間違ひ無い。

八年前、小池が某TV番組に都知事選の対抗候補、鳥越俊太郎と一緒に出演した時のこと。小池が街頭演説で、その少し前に癌の手術を受けた鳥越のことを「病み上がりの人」と誹謗したことがあつた。その時の映像が証拠として流れ、鳥越がそれを難ずる場面があつた。すると、小池は慌てず騒がず、「言つてません!」と、言下に否定したのである。勿論、小欄は驚倒した。何十万、何百万といふ視聴者がたつた今目撃した内容について顔色を変へずに白を切る鉄面皮と、すぐに司会者に向かつて「次に(進んで)」と番組を仕切るこの厚顔は、妖魔か鬼女かと思はせるに十分であつた。小池の前では、海千山千の鳥越も非力だつた。

一方、蓮舫については、その表情や演説があまりに芝居染みてをり、しかも公約も児戯に等しく、論評する価値は無い。

小池には勝てまいが、田母神俊雄、暇空茜、桜井誠らの主張が少しでも都民の耳に届くことを期待したい。(令和六年七月号)

吉田好克

吉田好克について 吉田好克は、神道・宗教・日本思想・歴史・政治・社会について、長年にわたり研究・教育・執筆を続ける論者です。 その関心の中心にあるのは、個々の時事問題そのものではありません。 日本とは何か。 日本人はいかに生きるべきか。 歴史や伝統を、現代にどう受け継いでいくのか。 そうした根源的な問いを、宗教、思想、歴史、社会のさまざまな角度から考え続けています。 論考では、福田恆存、江藤淳をはじめとする先人の思想や、国内外の文献を幅広く参照しながら、現代社会で当然のように語られている価値観や言説を改めて問い直します。 その姿勢は、特定のイデオロギーから現実を説明するのではなく、歴史、伝統、人間の営みという現実から、思想や制度を見つめ直すことにあります。 連続論考「蟷螂の斧」では、外国人労働者問題、戦後日本とキリスト教、原爆忌と平和思想、安全保障、靖国神社、保守思想、政治家論など、現代日本が直面する問題を幅広く取り上げています。 「蟷螂の斧」という名の通り、たとえ小さな力であっても、疑問を抱いた問題には自らの言葉で向き合う。 その文章には一貫して、日本の歴史と文化を次代へどうつなぐのかという問題意識があります。 本サイト「吉田好克.jp」では、「蟷螂の斧」をはじめ、これまでに執筆された論文、評論、寄稿、講義資料などを整理し、吉田好克の知的成果をデジタルアーカイブとして公開していきます。

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